藤井家の長男はしっかり者。
「おい奏多」
「お、ヒナおはよ」
「……あぁ、つーか、ぐほっ…!」
「えっ、」
「ちゃんと挨拶しろ、ボケ」
「くっ…!…んのババア…」
運が悪けりゃ何度でも蹴りを受ける日向に、奏多は同情の眼差しを向ける。
そしてこう口にした。
「ルール守ればやられねぇのに…」
【藤井家のルールその1。必ず挨拶をする】
これは、〝親しき仲にも礼儀あり〝の原理で家族全員に
『おはよう』『いただきます』『ご馳走様でした』『行ってきます』『行ってらっしゃい』『ただいま』『おかえり』『おやすみ』等の挨拶をきちんと交わすことを父、朔斗の提案でルールになったものである。
父や母が決めたことなら、見てない所で守る必要ないじゃん。とも考えられるが、守らないと
「母ちゃん、遥香が〝ただいま〝って言わなかったぜ」
「は!?マジチクるとかありえないんだけど!!」
三男、紫苑や末っ子、胡桃により律儀に報告されるので、そんなズルをすれば待っているのは、母による地獄絵図である。