死にたがり
「……、」
なにも言えなかった。
―――『なんの為に』。
そんなことを今まで聞かれたことがなかったからだと思う。
なにも答えられずに、やはり突っ立ったままのあたし。
「…友梨次第だけど」
「…、」
凛の腕があたしの背中に回った。
自分の置かれた状況を理解するまでに、すこし時間がかかった。
「…凛」
名前を呼ぶ。
あたしの肩に頭をこつんと乗せた凛。いつもだったらこんなことはしないのに。
もしかしたらそれほど心配をかけていたのかもしれない。
普段はふざけてるのに。
…人の顔色だけはよく見てる、…そういう人間なんだ。凛は。
「凛、離して」
「無理」
「…凛」
「なあ、今日泊まってやろうか?」
「結構です」
「…冷淡だな」
ゆるゆると腕が離れて二人の間に距離が出来る。
まあ、少しは気が軽くなったかもしれない。
「明日、迎え来る」
「登校する時間帯が被ってるだけじゃん」
「いいんだよ、それは」
凛が笑った。