死にたがり
「渡して来る」
「ああ、うん。じゃああたし行ってるよ」
「うん」
今来た道を振り返る。凛とはクラスが違うから、いつも昼休みになっても会わなければすぐには渡せない。
ぐるり、と辺りを見渡せば。
「…いた」
丁度良く凛を発見する。
幸運なことに凛は一人だから、周りに冷やかされることも今なら無い。
廊下を上履き独特の音をたてながら歩く。
あちらもあたしに気づいたらしく「あ、友梨」名前を呼ばれた。
「凛、これ」
「あ、さんきゅ」
「友達は?」
「トイレ行った。…友梨一人?」
「友達と食べるよ。今は渡しに来ただけ」
「おー。ありがとな、いつも」
「いいよ、別に」
味は美味しくもなんともないだろうし。ついでだし。
そんなので良ければ、いくらでも作れる。凛に軽く手を振ってから背を向けた。
「帰り、教室で待ってろよ」
凛の声が耳に届く。
いつも来るからわかってるのに。
「わかってるよ」