本気の恋の始め方
いくら人がいないとはいえ、ここオフィスなのに。
「ちょっと、落ち着いて、ここ、職場よ!?」
慌てて両腕を突っ張ったけれどビクともしない。
「俺、気持ち悪いですよね、自分でもわかってます、言われなくてもわかってます……!」
千野君は熱にうなされたようにささやきながら、私の背中に回していた腕にいっそう力を込める。
きもちわるい……?
って。
千野君が!?
なんで。そんなわけないのに。
「なに言ってるの、そんなこと思ってない、だけどあなたがどうしてこんな」
「だけど無理。無理なんだ」
「なにが――」
無理なのと、問いかけようとした私の唇は、千野君の唇に封じられる。
「――!」
驚いて体を離そうとしたけれど、背中に回った千野君の腕は、まるで万力のように私の体をしめつけて離さない。
それどころか、彼は私の体を簡単に抱き上げ、近くに設置してある大きめのテーブルの上に押し倒し、さらに覆い被さるようにのしかかってきて、深く口付けしてくる。
千野君やめて!!
抗議のつもりで彼の胸を叩いた私の腕は、まとめて頭の上に押さえつけられた。