本気の恋の始め方

いくら人がいないとはいえ、ここオフィスなのに。



「ちょっと、落ち着いて、ここ、職場よ!?」



慌てて両腕を突っ張ったけれどビクともしない。



「俺、気持ち悪いですよね、自分でもわかってます、言われなくてもわかってます……!」



千野君は熱にうなされたようにささやきながら、私の背中に回していた腕にいっそう力を込める。


きもちわるい……?

って。


千野君が!?

なんで。そんなわけないのに。



「なに言ってるの、そんなこと思ってない、だけどあなたがどうしてこんな」

「だけど無理。無理なんだ」

「なにが――」



無理なのと、問いかけようとした私の唇は、千野君の唇に封じられる。



「――!」



驚いて体を離そうとしたけれど、背中に回った千野君の腕は、まるで万力のように私の体をしめつけて離さない。


それどころか、彼は私の体を簡単に抱き上げ、近くに設置してある大きめのテーブルの上に押し倒し、さらに覆い被さるようにのしかかってきて、深く口付けしてくる。



千野君やめて!!



抗議のつもりで彼の胸を叩いた私の腕は、まとめて頭の上に押さえつけられた。


< 142 / 446 >

この作品をシェア

pagetop