本気の恋の始め方

「あ、ちゃんと髪拭いてないから、びしょびしょになってるよ」



ホッとしつつ、彼が持っていたタオルを手にとって、頭の水滴を拭きとると、千野君はにこにこしながら私を見つめる。



「――千野君?」

「ふふ」



彼は大きな手で私のウエストをつかみ、そのまま体を引き寄せ、特別に甘い声でささやいた。



「俺ね、昨日潤さんの寝顔ずっと見てたんだ」

「――!!」

「やっぱり一つ屋根の下って眠れないから」



はにかむように微笑む千野君。



「可愛かった。子供みたいな顔してたよ」

「やだ……」



朝、私が彼の寝顔を眺めていたように、彼も私が眠る姿を見ていたなんて。



だけど私は千野君みたいに、きれいじゃないのに……恥ずかしい。




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