本気の恋の始め方
彼と彼女の事情
千野君とつきあうことにしたってこと、一ノ瀬ホールディングスにいる以上、鮎子さんに隠し通せることではないから、正直に話した。
すると
「あああああーやっぱりー!」
社員食堂で、鮎子さんのお決まりの絶叫が響く。
「あ、鮎子さんっ……! 声、大きいですって!」
いくら社員食堂がめちゃくちゃ広いホールでも、誰かに聴かれてしまうかもと思ったら焦ってしまう。
きょろきょろとあたりを伺うと、今日も少し離れたところに、クールビューティーな十八歳、五所野緒(ゴショノオ)君が座っていた。
姿勢良く、今日もおそばをつるつると食べている。
きっと相当なおそば好きなんだろうな……。
「いいのよ。五所野緒は人の恋愛話なんてどうでもいいって思ってるんだから!」
まぁ、確かに人の恋バナなんて、鼻で笑いそうな雰囲気あるけどそこまで言わなくても……。
「五所野緒なんか、どうでもいいの」
改めて、そう、まるで自分に言い聞かせるように鮎子さんはつぶやくと、ふんっと鼻を鳴らす。そして私にぐっと顔を近づけて
「千野千早とつきあうのは時間の問題だって思ってたけど……まぁ、いいわ。祝福するわ」
と、ささやいた。