本気の恋の始め方
何を言ったんだろう、五所野緒君……。
けれど五所野緒君は、そんな鮎子さんを見て、ほんの少し、唇の端を持ち上げるようにして笑っている。
クールビューティーな彼がそうやって笑うと、ちょっと意外というか……
いや、それ以上に鮎子さんと彼って、ちょっとお似合いなんじゃないかって、思ったりして。でもまぁ、まさかね。
食事を終えパウダールームで歯磨き、化粧を適当に直してオフィスへと戻る。
午後からはまた頼まれていた仕事を片づけていると、斜め前の派遣の女の子が、受話器を持ったまま私に声を掛けてきた。
「三木さん。外線七番、芙蓉堂の町田さんからお電話です」
「――え?」
耳を疑った。
今「芙蓉堂の町田さん」って言ったよね。
それってるうくん!?
どうして、るうくんが私に電話を!?
「三木さん?」
不思議そうな表情の派遣さんに
「あ、はい。ありがとうございます」
慌てて机の上の受話器を持ち上げた。