本気の恋の始め方

るうくんの、かのじょ……。


それ以上彼女を、視界に入れておくことは不可能だった。


ドアを開けて玄関に滑り込めたことが奇跡。

まるで足元がぐにゃぐにゃの粘土になったみたい。

立っていられない。


ドアを背中で閉め、その場にぺたんと座り込んでいた。






それからどれくらい時間が経ったのか……。


外からはゴロゴロと雷の音が続いている。




勇気を振り絞りドアを少しだけ開ける。


当たり前だけれど、すでに彼女の姿は見えなかった。


るうくんの家のドアの側に、立てかけるように傘が目に入る。



彼女の傘。



それはまるで護符のようにドアを守り、私をるうくんに寄せ付けようとしない。


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