本気の恋の始め方
それから一時間もかからずに千野君がやってきた。
「潤さ~ん!」
ドアを開けた途端、ぎゅうっと抱きしめられた。
背の高い彼にそうされると、かかとが持ち上がってしまう。
ドキドキしながら両腕を千野君の背中に回すと応えるように、さらに強く抱きしめられて。
胸の奥がきゅうっと苦しくなった。
切なくて、苦しくも感じるけれど、もっと浸っていたい。
「千野君、とりあえずスーツ脱いで着替えたら? その間に準備してるから」
これ以上抱き合ってたら、込み上げてくるものにわけもわからなく泣かされちゃいそうで。照れ隠し半分に千野君の肩を叩いて、体を離す。
「はいっ!」
元気いっぱい返事をする千野君。