本気の恋の始め方
けれど
「邪魔しないようにしますから」
私が食器棚から出した食器に、丁寧にサラダやスープをよそっていく。
その手つきは慣れた雰囲気で、とても邪魔だとは思えない。優秀な男のひとというのは、なにをやっても手際がいいものなのかもしれない。
結局その後の片づけまで含めて、てきぱきと動いてくれた。
夕食を終えて、食べ切れなかったブロッコリーを冷蔵庫に仕舞っていると
「おおーなんか色々ギッシリだ。女の人の冷蔵庫って感じです」
後ろから千野君が物珍しそうにのぞき込んでくる。
「そう?」
「うん。俺の冷蔵庫、エビアンしか入ってないですから」
「えっ、水だけ!?」
「はい」
にこやかに答える千野君。
「料理はほとんどしませんし」
「へぇ……?」
片づけからなにから、手際がよかったのに料理はしないなんて、変な感じ。
「あ、わかった。いつも女の人に作ってもらってるんだ」
「え?」
冗談のつもりで言ったら、彼は一瞬目を丸くした。