本気の恋の始め方

あんまり気にしちゃだめだよね、なんて考え込んでいたら、

「潤さん……」

千野君が少し声のトーンを落として、私の頬を手のひらで包み込むように挟み、瞳をのぞき込んでくる。




「今日、泊まっていっていい?」

「――」

「泊まっていくね」

「――うん」

「ありがとう」



千野君は私から手を離して、それから何事もなかったかのように片づけを再開する。



泊まるって……

こないだみたいにまた別々に寝てくれるのかな。


それとも……

わざわざ許可を取ったっていうことは、そういうことを望んでるから……?



どうしよう。

わからない。


うんって言っちゃったけど、まだ心の整理がついていない。



とりあえず気持ちが定まらないまま片づけを終えて、テレビの音楽番組をぼんやりと眺めている千野君に、

「お風呂、どうぞ」

と声をかけた。


至極平常心を装ったつもりだけどなんだか微妙に裏返ったような。

恥ずかしすぎる……。




< 243 / 446 >

この作品をシェア

pagetop