本気の恋の始め方
あんまり気にしちゃだめだよね、なんて考え込んでいたら、
「潤さん……」
千野君が少し声のトーンを落として、私の頬を手のひらで包み込むように挟み、瞳をのぞき込んでくる。
「今日、泊まっていっていい?」
「――」
「泊まっていくね」
「――うん」
「ありがとう」
千野君は私から手を離して、それから何事もなかったかのように片づけを再開する。
泊まるって……
こないだみたいにまた別々に寝てくれるのかな。
それとも……
わざわざ許可を取ったっていうことは、そういうことを望んでるから……?
どうしよう。
わからない。
うんって言っちゃったけど、まだ心の整理がついていない。
とりあえず気持ちが定まらないまま片づけを終えて、テレビの音楽番組をぼんやりと眺めている千野君に、
「お風呂、どうぞ」
と声をかけた。
至極平常心を装ったつもりだけどなんだか微妙に裏返ったような。
恥ずかしすぎる……。