本気の恋の始め方
「潤さんは?」
そんな、恥ずかしさに震えそうな私をよそに、千野君はきょとんとした表情を浮かべる。
なんとも思ってない感じだ。
「わ……私はあとでいいの」
「そうですか。じゃあ、お言葉に甘えてお先に頂きます」
「タオルはあるのを使って」
「はい、ありがとうございます」
千野君は礼儀正しく微笑み、そしてバスルームへと向かった。
それからしばらくして、タオルで頭をゴシゴシしながら姿を現す千野君。
「お待たせしました。潤さんどうぞ」
めちゃくちゃ早くない?
思わず時計を二度見したけど、別に早くなかった。
ちゃんと当たり前に時間は過ぎ去っていた。
ああ、なんかもう私ぐちゃぐちゃだ……。
「潤さん?」
黙り込んだままの私を見て、千野君が不思議そうに首を傾げる。
「あのっ……いや……」
濡れた髪や、上気した肌が異常に色っぽい。
見たら悪いような気がして、慌てて目を逸らしていた。