本気の恋の始め方
なんだろう。
意識しちゃだめだって思うのに、そんなことばかり気になるなんて。
「じゃあ私も」
ギクシャクしながらバスルームへと向かい、髪を洗って体を洗ってラベンダーの入浴剤を入れたバスタブの中にしゃがみ込む。
落ち着いて……
落ち着かなきゃ……
「――」
湯船を出ようって思うけど、緊張して出られない。
だってお風呂を出たら
えっとその――
あの――
たった一度、彼に抱かれたときのことを思い出して全身がカーッと熱くなる。
細みに見えて案外がっちりした千野君。
私の体に触れる手のひらの熱。
いつも優しい千野君とは違う、男の顔。
忘れたわけじゃない。
むしろ強烈に覚えてるからこそ……
息が出来ないほど苦しくなるんだ……。