本気の恋の始め方

千野君はにこっと笑うと、すっとベランダから中に消えてしまった。


っていうか、っていうか!!

どうして彼が下に!?


おろおろしていると、玄関からピンポーンと音が響く。



「――!!」



もう来たの?

本当に来たの????



ビクッとしつつ、ロックをしたまま、おそるおそる細くドアを開けたら、ドアの隙間にねじ込まれるスニーカー。



「あ、ロック。さすがに用心深いですね」



そう言うのはやっぱり千野君で。だけど昨日のスーツ姿じゃなくて、着慣れた感じのグレーのパーカーに、スウェットパンツ姿だった。



「な、な、なんで下!?」

「開けてください、ここ」

「や、でも」

「開けてくれなきゃ、大声出しますよ」




< 25 / 446 >

この作品をシェア

pagetop