本気の恋の始め方
千野君はにこっと笑うと、すっとベランダから中に消えてしまった。
っていうか、っていうか!!
どうして彼が下に!?
おろおろしていると、玄関からピンポーンと音が響く。
「――!!」
もう来たの?
本当に来たの????
ビクッとしつつ、ロックをしたまま、おそるおそる細くドアを開けたら、ドアの隙間にねじ込まれるスニーカー。
「あ、ロック。さすがに用心深いですね」
そう言うのはやっぱり千野君で。だけど昨日のスーツ姿じゃなくて、着慣れた感じのグレーのパーカーに、スウェットパンツ姿だった。
「な、な、なんで下!?」
「開けてください、ここ」
「や、でも」
「開けてくれなきゃ、大声出しますよ」