本気の恋の始め方
「ちょ、ちょ、ちょっと、待って!? なんで千野君が、あそこにいたの!?」
「――あそこは友達の部屋で」
「友達?」
「だから、一ノ瀬ホールディングスに入社するずっと前から、俺は潤さんのこと知ってたんです」
「――」
以前から知ってたって、本当に?
思わず考え込んでいると
「ベランダで水やりするとき、変な歌うたうでしょ」
「――!!」
「えっと……『あおいはっぱ~おみずでのびるよ~ぐんぐん~♪ すくすく~♪』」
彼が口にしたのは間違いなく私が水やりで歌う自作の変な歌だった。
まさか聞かれてるなんて!
「や、やめて~!!」
恥ずかしすぎる!
赤面しながら彼の腕から逃げると
「ひどいよ、潤さん。あんな形で逃げるなんて」
うつむいた私の顔を、千野君がさらにのぞき込んでくる。