本気の恋の始め方
そういう顔を見ると、胸の奥がきゅんとする。
普段職場で見る彼とのギャップとか、こういうの私しか知らないんだ、とかそんな気持ちで嬉しくなる。
そして煮干しをあげることを考えてそわそわしてるのか、手元がおろそかになり始める千早。
思わず笑ってしまった。
「あげてきたら?」
「え、いいんですか?」
「いいよ」
「じゃあ行ってきます!」
千早は小皿を持ってあっと言う間にアパートを飛び出していった。
子供みたいなんだから……。
そして私は、彼がいない間にパジャマから部屋着に着替え、出汁巻き卵を焼き、冷凍していたほうれん草を解凍する。
いつもと変わらない、いつもの朝ご飯。
全部をテーブルの上に並べたところで、
「ただいまー」
と千早が帰ってきて。
それから一緒に朝ご飯を食べる。