本気の恋の始め方
「――潤さん?」
写真から目を離した千野君が、私を見て不思議そうに首を傾げる。
「どうしたの。顔色――」
「やめてっ!!」
背の高い彼に飛びかかって、手の中からフォトフレームを奪い取っていた。
「出てって!」
「潤さ……」
「出てってったら!!」
「――」
私の剣幕に驚いたのか、千野君は「ごめんなさい」とささやくように謝って、寝室を出ていく。
「――るうくん……」
長年心の中に押し込めていた彼の名前を、口に出してつぶやいていた。