本気の恋の始め方
翌朝――
「こんなに持てないって。送ってくれたらいいじゃない」
「あら、今持って帰れば今日食べられるものばかりなのよ」
夜通し泣いたことに気づかれたくなくて、朝こっそりお風呂に入った私。
頭にタオルをかぶったままお風呂を出ると、キッチンでお母さんがたくさんのタッパーにおかずを詰めているところだった。
「塁君のぶんもあるのよ。一緒に持って帰ってもらったらいいでしょ」
「なに言ってるのよ。迷惑に決まってるでしょ!」
冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出して、コップに注ぎ一気飲みする。
のどを通り過ぎていく冷たいお水に肩をすくめていると、カジュアルなシャツにデニムに着替えたるうくんが姿を現した。
「おはようございます」
「塁君、おはよう。あのね、これおかずいっぱい作っておいたから。持って帰ってちょうだいね」
「はい、ありがとうございます……」
るうくんはテーブルの上の大量のおかずを見てちょっと言葉を濁しつつも、
「当分ちゃんとしたものが食べられそうです」
と、薄く微笑む。