本気の恋の始め方
るうくんは私から目を逸らし、肘置きにもたれるように腕を置き、言葉を続ける。
「今の潤を見てると、昔の俺を思い出す。弱ってるところに付け入ろうとして、結局うまくいかなかったあの頃のこと」
「それって」
「俺が大学生のときにちょっとだけ付き合ってた子。他の男が好きだったのに、強引に振り向かせようとした。忘れさせることも出来なくて、すぐにふられたけどな」
確か「ゆきちゃん」だ。
るうくんが好きで好きでたまらなかった女の子……
新幹線が動き出すと同時に、るうくんは私の耳元に顔を近づけた。
「なぁ、潤。俺さ、弱っているお前に優しくしたいって思う自分と闘うの、結構大変なんだぜ?」
耳に響くるうくんの低い声に、ドキッとする。
それはトキメキとかそういうんじゃなくて、無意識に彼に頼るようなそぶりを見せてしまっていたのかという、恥ずかしさ。
「ご――」
「もう謝らなくていいから。これは俺の勝手な感情だしな」
るうくんはそう言って、ふっと表情を緩める。