本気の恋の始め方
東京に帰るまでの間、半分近くは眠っていたかも。
ふと目を覚ますと、通路側に座っていたるうくんは、ノートPCで報告書らしきものを作成している。
「悪い、起こしたか?」
手を止めてちらりと私に視線を向けた。
「――ううん、大丈夫」
実際、キーを叩く音は聞こえるか聞こえないかで、睡眠の邪魔にはならなかった。
首を横に振って、シートに座りなおすと、体がミシミシと音を立てる。
「あいたた……」
思わず首のあたりに手をやる、おじいちゃんみたいな私。
「帰ってゆっくり寝ろよ。明日からまた仕事なんだからな」
明らかに私の倍は働いていそうな彼に、気遣われてしまった。
ちょっと恥ずかしい……。