本気の恋の始め方
「じゃあな。おじさんとおばさんによろしくな」
「うん」
タクシーに乗り込むるうくんを見送ったあと、またよいしょと荷物を持ちあげる。
ああ、手がちぎれそう……。
その瞬間、ふと視線を感じて。
周囲を見回したけれど、目の前に広がるのはいつもと変わらない景色。
学生時代からなじみのある風景だった。
気のせいか……。
冷蔵庫にお母さんの料理をつめたらパンパンになった。
保存ができそうなハンバーグなんかは冷凍庫に。
千早は煮込みハンバーグが好きだから、いつか食べさせてあげよう――
なんて、当たり前のように千早のことを考えずにはいられないくせに、大きな問題からは目を逸らしてる。