本気の恋の始め方

「はぁ……」



ため息をつきつつ、ソファーにほったらかしのバッグから携帯を取り出す。


電源を入れると、案の定千早とメールと留守番電話がたくさん残っていた。



メールを見るのが怖い。

留守番電話サービスを聞くのが怖い。

だけど見ないままで逃げてもいいことはなにもない。


明日、会社に行けば必ず千早には会うわけだし、突然会って心臓が止まるようなショックを受けるよりも、自宅にいる今のほうがずっとマシだ。



「――ショックを受けるの前提……?」



思わず携帯を握りしめたままソファーに寝ころぶ。



どうして私はこんなに傷つくのが怖いんだろう。



臆病すぎる自分に気づいて、情けない気持ちでいっぱいになった。




< 333 / 446 >

この作品をシェア

pagetop