本気の恋の始め方
「はぁ……」
ため息をつきつつ、ソファーにほったらかしのバッグから携帯を取り出す。
電源を入れると、案の定千早とメールと留守番電話がたくさん残っていた。
メールを見るのが怖い。
留守番電話サービスを聞くのが怖い。
だけど見ないままで逃げてもいいことはなにもない。
明日、会社に行けば必ず千早には会うわけだし、突然会って心臓が止まるようなショックを受けるよりも、自宅にいる今のほうがずっとマシだ。
「――ショックを受けるの前提……?」
思わず携帯を握りしめたままソファーに寝ころぶ。
どうして私はこんなに傷つくのが怖いんだろう。
臆病すぎる自分に気づいて、情けない気持ちでいっぱいになった。