本気の恋の始め方

翌朝。

入社して初めて、会社を休んだ。


失恋で会社休むなんて非常識だって思ったけど、泣きすぎて頭はガンガンだし、瞼ははれあがって開かないし……。

とてもじゃないけどこんな状態で人前には出られない。


さらに声もガラガラだったから、病欠の連絡をしたときに、すごく心配されてしまった。



「――申し訳ありません……」



電話を切ってまたベッドに潜り込む。


枕に顔を押しつけると、かすかに千早の甘い香りがすることに気づいて、とっさに枕をベッドの外に放り投げていた。



「はぁ……」



ベッドから抜け出して、キッチンで頭痛薬を飲む。


千早とさんざん抱き合ったあのベッドも、思い出が多くて、心が痛くなるから。

寝室から毛布を持ってきてソファーの上で丸くなると、しばらくして凶暴な眠気が襲ってきた。



眠っているときは何も考えないで済む

傷つかないで済む……




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