本気の恋の始め方
失恋したら何にもやる気がなくなるっていうけれど、私はむしろ必死で体を動かすほうを選んでいた。
ソファーやテレビの位置を変え、念入りに掃除をした。
部屋の至る所にあった千早のものは、ぎゅっと目をつぶって全部段ボールに押し込む。
死にたいくらい落ち込んでいる私の背中を押したのは、どこにもかしこにも千早の思い出が染み着いていて、目に入れるとつらいから全部まとめて隠してしまいたい、っていうそれだけの気持ち。
自分でも驚くくらいテキパキと作業が進んだ。
悲しい気持ちに浸りたくない。
もはや強迫観念のような、そんな感じ。
汗をびっしょりかいたからお風呂に入った。
大好きなアロマキャンドルを浮かべて
いい香りにつつまれてゆっくり息をする。
このまま美容院にでも行きたいくらいだけど、いきつけのところは月曜日お休みだし
明日出勤して髪型変わってるとさすがに気まずいし
(日曜日に行ったと言い訳できたとしても)
まぁ、とにかく……
恋が終わってもこの世の終わりじゃないってこと
毎日の生活は当たり前のようにやってくるって事実に、一刻も早く馴染んでしまいたかった。