本気の恋の始め方

弱虫



「風邪、大丈夫ですかぁ?」



翌朝、ロッカーで制服に着替えていると、咲子ちゃんが声をかけてきた。



「あ、うん。大丈夫だよ。昨日は休んでごめんね」

「それはいいんですけど、なんかやつれてるっていうか。目の下、くまがあるし~油断大敵ですよ~」

「えっ、本当!?」



思わずロッカーの内側についてる鏡をのぞき込んだ。


小さな鏡の中に映る、相変わらず最低限の化粧をした自分は、たしかに咲子ちゃんの言うように疲れて見える。



お風呂にも入ったしパックもした。

なのにこんなひどい顔……。


虚しくなりつつバッグからポーチを取り出していると、咲子ちゃんが携帯をパカッと開けて私の顔をのぞき込んできた。



「あ、潤さん、彼氏いましたっけ?」

「――へっ? いや……」



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