本気の恋の始め方
さらさらの栗色の髪、きれいなカーブを描いたアーモンドアイ。
濃紺のスーツとシャツ、ネクタイ。
どこを見ても完璧。
いつもの、いっぺんの隙もない千早……
だけどその表情から、いつもの王子様スマイルは消えている。
「三木さん、お願いします」
平坦な声色で千早はそう言い、くるりと私に背中を向けて歩き始めた。
「――」
声を掛けられるなんて考えてなかったから一瞬凍りついたけれど。
仕事、だ。
そう。
これは仕事……
自分に言い聞かせて彼の後を追う。
マーケティング部を出て資料室へ。
朝礼前だから人けはない。
彼に渡した資料は確か芙蓉堂のものだけだったと思うけれど……。