本気の恋の始め方

「資料って、芙蓉堂のものですか?」



目当ての書架に視線を巡らせファイルを手に取った瞬間


「潤さん……」


後ろから腕が伸びてきて、体が引き寄せられていた。



「やっ……!」



腕を振りほどいて突き飛ばす。


手に取りかけていたファイルが床に落ちて中身が散らばった。



「――潤さん……」



床に落ちたファイルを拾い、立ち上がる千早。


とても傷ついた顔をしていた。




「ちゃんと話がしたい」

「――話をして……どうなるの」

「え……?」

「事実はなにも変わらないでしょう?」



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