本気の恋の始め方
「それから私はずっと、引きずってるの。彼のこと。初めての時のことも……
だから、千野君に誘われた時、『上書き』出来るかなって思ったの。そういうふうに、あなたを利用したの。ごめんなさい」
過去の思い出を清算するためにあなたと寝ましたなんて、男の人を馬鹿にした発言、許されるとは思っていない。
しかも千野君は、信じられないことに私に好意を持っていてくれたみたいなのに。
だけどそうとしか言いようがなくて……。
情けないやら恥ずかしいやらで、自己嫌悪に陥る。
「ごめんなさ――」
「俺が忘れさせる!」
私の謝罪の言葉にかぶせるように、千野君が叫んだ。
「――は?」
顔を上げると、玄関にいたはずの千野君が、廊下に座り込んだ私の隣に、腰を下ろし、真剣な表情で私を見つめていた。