本気の恋の始め方
本当に千早のおうちなの……?
違ってほしいと思ったけど。住所はもちろんのこと、黒々とした筆さばきで書かれた「千野」の表札が堂々と掲げられているから間違いないわけで……。
ああ、どうしよう。
犬とかけしかけられたら……。
おそるおそる、門についてあるインターフォンを押した。
『――はい』
落ち着いた女性の声。
さらに緊張が足元から駆け上がってくる。
もしかして千早のお母様?
いや、お手伝いさんとかいるのかも!?
「わっ、わたくし、千野君の同僚の三木と申します。千野君はご在宅でしょうか?」
『お待ちくださいませ』
プツン、とインターフォンが切れる。
「はぁっ……」
思わずため息が漏れた。