本気の恋の始め方
「――」
それからたぶん、十分以上は待たされたと思う。
やっぱり千早、私に会いたくないのかも。
だとしても彼を責められない。
当然の気持ちだと思うから。
だけどせめて、迷ってるなら最後に会ってほしい。
顔を見て謝りたい……。
大きな門を見上げる。
「ごめんなさい、お待たせして!」
「ひゃっ!」
すると突然何の前触れもなく門の脇にある戸がガラリと開いて、中から和服姿のぽっちゃりした女性が飛び出してきた。
驚いた。
まったく心構えもしていなかったから、心臓が口から飛び出しそう。息が止まるかと思った。
「あの……もしかして、ちは、千野君のお母様、ですか?」
しどろもどろになりつつ尋ねる。