本気の恋の始め方

抵抗するまもなく。あれよあれよと、お屋敷の中に引っ張り込まれて、お座敷に通されてしまった。



それからすぐに、エプロンをしたお手伝いさんらしきひとがやってきて、テーブルを挟んで座る、私とお母さんの前にお茶を並べる。



「あの、お口にあえばいいんですが……」



とりあえず、緊張しつつ、持っていたカステラを袋から取り出し、差し出すと、


「槙屋秋光のカステラね、わたし、だぁいすき!」


お母さんは、カステラをお手伝いさんに渡して、それからにこにこしながらじっと私の顔を見つめた。



「――あなたが三木さん……」



それまでにこにこしていたお母さんの空気が変わる。




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