本気の恋の始め方
「ううん、いいのよ。パパはいい加減子離れしなさいって言ってたし、最近、痩せてるちーくんもカッコいいかなって思えるようになったし。うふっ」
そしてお母さんは、大きな目をぱちぱちさせながら首を傾げる。
「ところで今日はどうして一人できたの?」
「――えっ?」
「一緒じゃないの?」
「――」
はい?
「あの……」
「引っ越し準備中でしょ?」
「引っ越し!?」
「あらっ、あなたに内緒だったのね。ちーくんに悪いことしちゃったわ……」
お母さんは、いたずらがみつかった子供みたいにしょんぼりしたあと、
「ちーくんね、家にいたらいつまでもカノジョ呼べないし、なんてナマイキなことを言って、引っ越しの準備してるのよ。
もう一ヶ月くらい前からお部屋探して、ちょっと前にやっとお部屋が決まったの。たぶん今日もそっちで引っ越しの準備してると思うわよ~」
と、引っ越し先の住所をメモして渡してくれた。