本気の恋の始め方
小中高と運動部だった。
走ることが好きで、体を動かすことが好き。
だけどこんなに必死になって走ったのはどれだけぶりだろう。
クリアになった頭と視界。
そして会いたいと思うのは、ただ一人だけ。
目的のマンションは駅からほど近い新築。
引っ越し業者が出入りしているどさくさに紛れて、エレベーターに乗り込んだ。
それから一直線に千早の部屋へと向かう。
たくさん走って、心臓がドキドキしてるのか
今から千早に会うからドキドキしてるのか
自分でもよくわからない。
お母様に教えていただいた部屋の前に立ち、深呼吸。
思い切ってインターフォンを押すと、やや経ってドアが開いた。
けれどチェーンがかけっぱなしになっているみたい。
ドアは私のために開けてはもらえない。
これが今の私と千早の距離。