本気の恋の始め方
けれど間違いなく、薄く開いたドアの向こうに、千早が目を見開いて立っているのが見えた。
「――潤さん」
一目見て、声を聞いて、心が震える。
ぎゅっとこぶしを握って頭を下げた。
「急に尋ねてきてごめんなさい」
追い返さないで……!
心の中で叫ぶ。
「――ここ、誰から聞いたの?」
「えっと、まずサチさんに実家を教えてもらって。実家で千早のお母様に教えてもらって……」
「えっ! コウが実家教えた!? で、母さんに会ったの!? 嘘だろ……」
ドアの向こうで大きくため息をつく気配。
それはものすごく、困った感じで……。
そりゃそうよね。
別れたカノジョが自分の親に会って、カノジョ面したかもしれないって思ったら、困るよね……。