本気の恋の始め方
「ごめんなさい……ちっ……千野君が家にいないって知らなくて……」
泣きそうになったけど、もう絶対に逃げないんだって自分に言い聞かせ、ぎゅっと唇をかみ顔を上げる。
「話をしたいの。最後にもう一度……」
最後にはしたくないけれど。
そう言えば少しくらい話を聞いてくれるかもしれないって、わらにもすがるような思いで口にした。
「――ちょっと待って」
一度ドアが引かれてロックが外される。
キィッと音を立てて開くドア。
グレイのカットソーにデニム姿の千早が、私を見下ろしていた。
少し前までは、当たり前のように見ていた姿に、懐かしさで胸がしめつけられる。
「話ってなに?」
千早の話すことはない、と言わんばかりの態度に、足がすくんだ。