本気の恋の始め方
「――」
千早は黙って私を見つめるだけで、一言も発しない。
彼の薄い色素の瞳にはどんな感情も読みとれない。
やだ。怖い。
彼から離れたくない。
「っ……だ、だめ……? もう、遅い……?」
思わず千早の着ているシャツをつかんでいた。
涙がぼろぼろ溢れる。
ああ、もうなんで、私こんなに往生際悪いんだろう。
だけど……だけど、あきらめたくないよ……。
「潤さん……」
沈黙を守っていた千早が私の名前を呼ぶ。
そしてシャツをつかんでいた手をそっと外し、私の頬の上を指でなぞる。