本気の恋の始め方
「――俺さ、正直、全然、まったく! 話を聞かない潤さんにめちゃくちゃ腹が立ったんだよ。だからこりゃだめだなって。それでちょっと距離おいたほうが潤さんも冷静になってくれるかもって思って」
「ご……ごめんなさい……っ」
「いや、そもそも誤解されるようなところ見られちゃったんだから、俺も悪いんだけど……」
千早はそっと体をかがめて、私の涙を指の背でぬぐう。
「だけどね、これから先、潤さんがまた俺を信じられなくて疑心暗鬼にならないこともないかもって……潤さんが俺を見る目と、自分への評価を変えない限り、同じことは何度も繰り返されるんじゃないかって」
千早を見る目と、自分への評価?
「それって……」
「だから俺はどうしても、潤さんに変わってほしくなったんだ」
千早は私の疑問には答えず、手のひらを頬に乗せ、指で頬に残った涙を拭う。
「変わる……」
心臓がドキンと跳ねた。
だって今まで、自分を変えようなんて思ったことなかったから……。