本気の恋の始め方

「きれいなところだけ見せないで、全部、ありのままを見せてほしい」



まっすぐに私を見つめる千早の瞳は、彼が言うように「ありのまま」に見えて。

そして私は、こんなふうに見つめてくれる彼の気持ちをないがしろにしていたんだって、初めて気づいた。



「表面をとりつくろって、胸の奥に抱えないで。俺たちにはお互いをわかり会うための、言葉や……コミュニケーションがあるでしょ?」



千早は、私の冷たくなった指先を手に取り、そっと口元に引き寄せる。



触れられた先からぬくもりが戻る。

凍っていた心が溶けていく。




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