本気の恋の始め方
鮎子さんと楽しくランチを終えてマーケティング部に戻ると、千野君が、私の机の前に立っていた。
いったいどうしたんだろう。
「千野君?」
声を掛けると、彼はハッと顔をあげて、にこやかな笑顔を浮かべる。
「すみません。戻ってきたばかりなのに。過去の芙蓉堂のプレゼン資料頂きたくて」
「わかりました。過去五年分でいいですか?」
「いえ、あるだけいただけますか? 一応全部目を通しておきたいので」
「わかりました。メールでお送りします」
「お願いします」
千野君はさわやかに微笑んで、自分の机に戻っていく。
彼の背中が遠くなった瞬間、私の机の周りの女の子たちが、
「素敵~」
とピンク色のため息をつく。