本気の恋の始め方
「潤さん、ズルイですぅ~」
隣の席の後輩、咲子ちゃんが唇をとがらせる。
「ズルい?」
「千野さんには、私がやりましょうかって言ったんですけど」
「うん」
芙蓉堂の資料云々だったら、実際誰でもいいに決まってる。
「三木さんは資料一つでも、そのまま寄越したりしないから、三木さんに頼むように先輩に言われたって、言うんですよぅ」
「あ……」
確かに、彼の言うとおりだった。
私の勝手な意見だけど、芙蓉堂の過去のプレゼン資料を渡すだけじゃ「資料を用意する」ことにはならないと思うし。
そのプレゼンの結果とかも必要だと思った私は、資料室へと行くつもりだったんだ。