本気の恋の始め方
って。私ったら何考えてるの。
恥ずかしい……。
彼から目を逸らしてうつむくと――
「今日、仕事終わったら飯行きません?」
「え?」
「健全にアルコール抜きで」
千野君はいつもと変わらない様子で誘ってきた。
けれど夜、二人で食事には正直抵抗を感じてしまった。
「――ごめんなさい。ちょっと予定があるの」
見え見えのウソを付く私。
「そうですか。急に誘ってごめんなさい。じゃあ、また今度」
「うん」
きっと私の下手なウソ……気づかれたに違いないのに、千野君はさらりと受け止めてくれた。
「じゃあ、お先に」
何事もなかったように一人で資料室を出て、彼あてにまとめた資料のPDFデータを送信する。