本気の恋の始め方
いつものように割り勘でレストランを出て(彼はいつだって払おうとしてくれるけど、私がそれを固辞している)
てくてくと二人で夜道を歩いた。
アルコールはなしでと言ったけれど、おいしいイタリアンでお酒を飲まないなんてありえないだろうということになり、お互い一杯だけグラスワインを飲んだから、これは酔い覚ましの散歩……。
それだけ……。
「潤さん」
「ん?」
「手、つなご」
彼は隣を歩く私の手をさっとつかみ、つつみこむようにして歩き始める。
手をいきなり握られて、どう言ったら離しても失礼にあたらないかと考えていたその隙に、
「あ、潤さん公園があるよ!」
走り出した千野君に、そのまま手を引かれて私まで走ることになってしまった。