本気の恋の始め方


けれど十六歳の冬――

私は何をとち狂ったのか。


「るうくんが好き」


と、お母さんに言われて煮物を差し入れに行ったついでに、口にしてしまったんだ。


たぶん、その日のお昼、彼が駅で女の子と歩いていたのを見たせい。


女の子の姿は見えなかったけれど、るうくんは長身の背中を少し曲げて、隣を歩く女の子の顔を優しく見下ろしていた。


あんなるうくんを初めて見たからショックだった。

それまで彼は、すごくモテてたけど、女の子に対してはどこか冷たかったから……。



あんな風に女の子の顔をのぞき込んでいるるうくんなんて、見たくなかった。



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