本気の恋の始め方
その日の夜は一睡も出来なかった。
ずっと塁のことばかり考えて、頭の中で、彼の面影ばかりなぞっていた。
大学から一人暮らしを始めた塁。
帰省した時はちょくちょく遠目に見ていたけれど、実際向かい合って話してみると彼は、想像以上に素敵になっていた。
広い背中、長い手足。金髪をやめた、さらさらの黒髪。
すっきりとした切れ長の瞳は、端正な顔立ちのせいか冷たそうに見えるけれど、ふとした拍子に見せる優しさに、胸の奥がきゅんとする。
今日だってそうだ。
子供あつかい、されたのかもしれないけど……
塁が私の頭をぽんぽんと叩きながら見つめてくる瞳は、昔と変わらない優しい瞳だった。
私……
塁のこと、まだこんなに好きなんだ。
毎日そんなことばかり考えていたら、眠れなくなった。
バカみたいに塁のことで、いっぱいになった。