本気の恋の始め方

車はシルバーカラーの、なんだかかっこよさげなスポーツカーだった。



「これ、塁の?」

「まさか。母さんのだよ。俺、こんなの買えねぇし」



苦笑する、塁。


塁のおうちは母子家庭で、お母さんはアパレルショップのオーナーをしている。

時々、私に、シンプルだけどとってもかわいいシャツやワンピースをくれるんだけど、なんだかもったいなくて一度も袖を通したことがない。


図々しくも、いつか塁と二人で出かけられる日……

いわゆるデートが来たら着ようと、その日まで取ってるんだ。

バカみたいだよね。そんな日、永遠に来ないのに……。





「これ、膝に乗せとけ」



座席に乗り込むと、私の膝にブランケットを乗せる塁。

彼の大きな手が、一瞬膝に触れた。



「――!!!!」



口から心臓が飛び出そうになる。




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