本気の恋の始め方

おまけに、硬直した私に向かって、

「シートベルト、ねじれてないか?」

確かめようと肩に手を伸ばしてくるから、目の前が真っ白になった。



やめてー!

これ以上触られたら、私死んじゃうよ!!



「だ、大丈夫!!!!」

「――そっか」



そんな私の態度に呆れたのかなんなのか……

塁は苦笑した後、静かに車を発進させる。




「――」



静まり返った車内。

塁はどうでもいいかもしれないけど、緊張で苦しい。


なんで私、こんなにつまんない女なんだろう。

せっかく二人きりなのに、気の利いた言葉すら思い浮かばない。


情けなくなりながら、運転中の彼をこっそりと盗み見る。



前を見つめる精悍な横顔。ハンドルを握る大きな手。長い脚。

なにもかもが、同級生とは違う、大人の男の人って感じ。



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