夏の夜の海辺で【短編】
そんなことを無限のループのように考えていれば時間がすぐに過ぎ去って行くというものだ。
とても濃い事を必死で脳みそを動かし考えるのだから、時間が経つ感覚なんてほとんど感じることができない。
「…………あ」
「お、会ったな」
散歩――……どこに行こうか迷って、結局は海岸沿いを歩いていれば案の定あの男に会った。
なんだろう、もうここを歩けば会うのが当たり前のようになっている。
それは相手の方も同じようで、軽いノリで片手を上げてはニコニコと笑っていた。
「散歩してるの?」
「うん。貴方は?」
「あぁ、俺も散歩」
ちらりと、上げられていない方の手を見た。
その手にはコンビニのビニール袋が下がっていて、中は……お菓子だろうか。
カサリ、それを前に持ってきて
「バレた?」
なんて言う相手がなんだか可笑しくて笑った。
「一緒に食べようか。会う気がして、多めに買っといたんだよ。勿論、浜辺でどうだい」
「うん、是非。あ、私飲み物かってこようか?」
「いい、いい。俺が一緒に買ってあるから」
「……2つ?」
「当たり前だろ、だからさ、」
「会う気がした、って?」
「その通りだよ、まったく」
二人で顔を見合わせて、どちらからともなく笑った。
(「想いが通じあってる?」)
(……なんてね。)
(……なんてな。)