夏の夜の海辺で【短編】
なな
サァ、と吹く潮風に私は髪を靡かせながら後ろを振り替える。
「ねぇ、早く」
「――……そんなに急がなくても、見れるさ」
ゆっくりと私の後をついてくる彼は、淡く笑って。
私もつられるようにして、笑う。
「知ってる?この砂浜で流れ星をカップルで見れたら、ずっとずーっと一緒にいられるんですって」
「へぇ、本当?」
「うん、勿論」
「ふぅん。……誰情報?」
「私が、今作りました」
ペロ、と舌を出して見せる。
コノヤロウ、と距離を縮めた彼が私の髪をクシャと撫でて。
―――――――………………びっくりした?
ふふ。
だって、ねえ。
嫌いになるはず、ないじゃない。
好きよ、ヒロト。
夏の夜の海辺で、失恋してしまったけれども。
あの時からまた、新しい恋もはじまっていたの。
―end―