夏の夜の海辺で【短編】
普通の人が聞けば、ただ「ふられた」というだけ。
ただそれだけのことで、この友人は私がとても傷付いて、何か繋げるものが無ければ今直ぐにでも崩壊してしまうことをわかってくれている。
あぁ、なんて、良い友人なんだろう。
「私なんかじゃ、話を聞くくらいしか出来ない。繋ぎ止めてあげることが出来ない、」
そう言いながらしきりに涙を流す友人の髪の毛をふわふわと撫でた。
「ありがとう」
感謝の言葉は、とても自然に出てきたもの。
「感謝されるようなこと、私は貴女にできていないのよ?」
ゆっくりと、ふわふわな髪の毛を横に揺らす友人に、――……きっと見えてはいないのだろうけども……――私はふっと笑ってみせた。
「そんな事ないよ。私なんかの為に泣いてくれてありがとう」
「ううん、私、自分の為に泣いているのよ、きっと」
「それでも良いんだよ。偶然かもしれないけど、それは私の為にもなって、ます」
「――……もうっ!」
くす、と嬉しそうに、そして小さく友人は笑った。
「ありがとう、美紀」
(貴女と友達で、)
(貴女に話すことが出来て。)
(良かった、ぁ。)