夏の夜の海辺で【短編】
ごお
朝。
昨日は良く眠れたと言うのに、どうも頭がズキズキとして熱っぽかった。
ずるりとベットから抜け出して、向かうのは洗面所。
少しでも早くスッキリしたくて、髪を解かす先に顔を洗えば水の冷たさに目は覚めた。
そのまま顔を上げて鏡を見ればなんとも言えない……いや、言える。
お年頃の女の子とは思えないほどにブッサイクな人間がぼけっとした顔でこちらを見ていた。
「うわぁ……」
今日が休みで良かった、と頭の片隅で思う。
が、休みとて家でだらだらしている気はないのだ。
今日も海に繰り出したい。
それも、夕方から繰り出して、あの人よりも先に海で待つんだ。
そう決めている。
とにかく、ぐっちゃぐちゃの髪の毛をブラシで解かしつつ、私は今日の予定を立てていた。
なにをしようにも、頭の中にはあの男の人がいる。
まったく、フラれたばかりだというのに――……どうしてこうも、女というのは調子が良いのだろうか。
もう少しフラレた、と言うことを引きずるというか余韻に浸るというか、それだけを考えては落ち込むという時間があってもいいんじゃないだろうか。
一昨日会ってすぐの男に心が傾いているなんて、なんだか、なんだか……自分が軽い女のように思えてしまう。